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「期待感」は痛みを和らげる −プラセボ効果の神経?物学的な基盤の解明−

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター生体機能動態イメージング
研究ユニットのジェン・イン リサーチアソシエイトらの国際共同研究グルー
プは、ラットで「プラセボ効果」を再現し、偽薬(プラセボ)による鎮痛効果
に前頭前皮質のミューオピオイド受容が関与していることを明らかにしました。
本研究成果により、今後、心理活動だけで内在性の脳機能を活性化するプラ
セボ効果の作用機序を、動物実験で詳細に解析できる可能性があります。

【背景】薬理作用のない偽薬(プラセボ)に対して、患者が治療効果を「期
待する」だけで実際に何らかの治療効果が得られる現象を「プラセボ効果」
といいます。ヒトを対象とした研究では、プラセボにより痛みの感覚が和ら
ぐ効果(プラセボ鎮痛効果)についての研究が進んでいます。プラセボ鎮痛
効果と脳機能の関連を調べる研究から、痛みの緩和の際に前頭前皮質、前帯
状回、中脳水道周囲灰白質の一部の領域で神経活動が亢進すること、内因性
の神経ペプチドであるオピオイドやドーパミン神経系が関わることなどが
報告されています。
通常、このような高次元の心理活動を伴う脳機能の研究は、被験者に主観的
な感覚を問いながら、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)や陽電子放射断層撮
影法(PET)などの非侵襲的脳機能イメージング技術を用いて、関連する脳
活動領域を探索します。しかし、この手法では脳内の活動領域は同定できて
も、「プラセボに対する期待感」が、脳の「どこで」「どんな神経回路」を
介して「どのような作用機序」により、最終的に内在性の脳機能を活性化す
るかといった詳しい神経基盤を明らかにすることは不可能でした。
一方、近年のイメージング技術の進歩により、これまでは難しかった小動物
脳の解析が可能になり、マウスなどげっ歯類を用いた非臨床研究においても
臨床データに匹敵する脳機能画像を得ることが可能になりました。またヒト
以外の動物においては、「期待感」といった心理活動だけではなく、「パヴ
ロフの条件付け」によりプラセボ効果が誘導されることが報告されていま
す。そこで、国際共同研究グループは、慢性的な神経障害性疼痛を起こし
たラット(神経因性疼痛モデルラット)を用いて小動物でのプラセボ鎮痛効
果を再現し、その神経生物学基盤の解明を目指しました。

【今後の期待】プラセボ効果は、心理活動だけで内在性の生体機能を活性化
する代表的な現象です。プラセボ効果を合理的に活用することで、治療効果
の向上や投薬容量の軽減による薬物副作用・耐性の予防につながると期待で
きます。
今回、小動物のラットでヒトのプラセボ効果の再現と解析に成功したことか
ら、今後は遺伝子改変動物など特定の神経回路を選択的に制御できる遺伝子
工学的な手法と組み合わせることでプラセボ効果の全貌を明らかにし、心に
よる脳・身体機能の相互作用の基本原理の理解を目指します。

原論文情報
Zeng Y., Hu D., Yang W., Hayashinaka E., Wada Y., Watanabe Y., Zeng Q.
Cui, Y.L., "A voxel-based analysis of neurobiological mechanisms in
placebo analgesia in rats", NeuroImage,
10.1016/j.neuroimage.2018.06.009

        ※プレスリリースより一部抜粋して掲載しております

 


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