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2017年2月
日本医療研究開発機構(AMED)は1月24日、双極性障害のリスク遺伝子同定を目的に、
日本人サンプルでは過去最大規模となる約3,000人の双極性障害サンプルと、
約6万人の対照者を用いた全ゲノム関連解析を行い、新規リスク遺伝子の同定に成功したことを発表した。
この研究は、藤田保健衛生大学医学部精神神経科学の池田匡志准教授、岩田仲生教授、
理化学研究所統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長、
高橋篤客員研究員、鎌谷洋一郎チームリーダーらを含め、32の大学・施設・研究チームが共同で行ったものである。
双極性障害(躁うつ病)の有病率は1%程度と推測されている。
疫学的研究(双生児・家系研究など)の結果から、
発症には遺伝的要因がかなりの割合で関与することがわかっているが、詳細な原因は未だ不明であった。
また、日本人を対象とした解析では、他の報告よりも極めて小規模のサンプルのため、
一つもリスクは同定されていなかった。
本研究では、藤田保健衛生大学を中心に、全国の大学・施設が参画するコンソーシアムである
advanced COSMO(Collaborative Study of Mood Disorders)と共同で双極性障害のサンプルが収集された。
また、対照となるサンプルは、理化学研究所が参画するBioBank Japanの結果を用いている。
最終的に対象となったサンプル数は、2,964名の双極性障害と、61,887名の対照者で、
これらのサンプルを用いて全ゲノム関連解析を行った。
結果、日本人サンプルを用いた解析では、
コレステロールや不飽和脂肪酸の血中濃度と関連するFADS遺伝子領域に新規リスクを同定し、
世界で初めての双極性障害のリスク遺伝子として同定された。
このFADS遺伝子群の多型は、他の報告によると、
コレステロールや中性脂肪、魚などに含まれるω3不飽和脂肪酸(PUFA)、
べにばな油などに含まれるω6 PUFAなど、脂質に関連する物質の血中濃度と強く関連することが分かっている。
以前より、双極性障害と脂質代謝異常との関連は、疫学的研究から指摘されており、
例えば、脂質代謝異常の有病率は、双極性障害患者の方が一般集団よりも高いことが知られている。
本結果と合わせて考えると、双極性障害と脂質代謝(異常)は、少なくとも関連があり、
遺伝的なリスクとして共通していることも考えられる。
本研究を進め、仮に因果関係(脂質代謝異常が双極性障害の原因となっていることなど)が解明できれば、
脂質代謝に関して、食事など介入することなどで、双極性障害発症に対して予防的介入を行うことや、
現在行われている治療においても、脂質代謝に介入することが有用であるかもしれないなど、
新規の治療法として役立つ可能性が示唆される。
また、その他のリスクとなっている遺伝子でも機能解析をすすめることで、
新規薬剤の開発などへの足がかりとなることが考えられる。
世界最大規模の全ゲノム解析で双極性障害の新規リスク遺伝子の同定に成功
―脂質代謝異常症の遺伝子は双極性障害(躁うつ病)と関連―