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〜経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を用いた世界初の試み〜

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統合失調症患者の日常生活技能をニューロモデュレーションで改善
〜経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を用いた世界初の試み〜

2018年2月

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
(NCNP、東京都小平市 理事長:水澤英洋)
トランスレーショナル・メディカルセンター
(センター長:和田圭司)情報管理解析部長 住吉太幹らの研究グループは、
経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current current stimulation, tDCS)が、
統合失調症患者の日常生活技能や認知機能を改善する可能性を初めて見出しました。

研究グループは、認知機能障害が統合失調症患者の
社会復帰に大きく影響を及ぼすことに着目し、
「統合失調症の認知機能障害に対する経頭蓋直流電気刺激の効果に関する研究」を立案しました。

統合失調症は一般人口の約1%が罹患する精神疾患です。
主な症状として幻覚や妄想などの陽性症状、
意欲低下や感情の平板化などの陰性症状、
そして記憶、注意力などの認知機能の障害が挙げられます。

認知機能に依存し、より上位の機能レベルに位置する、
金銭管理やコミュニケーション力など日常生活技能の改善は、
患者の社会復帰に直結します。
そのため、より効果的な治療法の開発が求められています。

tDCSとは、1-2 mA程度の微弱な電流を頭皮上から当てる方式の
ニューロモデュレーションで、麻酔の必要がなく、
副作用のリスクが小さいなどの利点があります)。
これまで主にうつ病に対する有効性が、メタ解析の結果などで示されています。

研究グループは、統合失調症患者に対してtDCSによる刺激を
1回20分、1日2回、5日間に施行しました。
その結果、最終刺激から1ヶ月後に、日常生活技能が治療前と比べて
有意に改善しました。また、認知機能、精神病症状、
抑うつなども有意な改善を認めました。

今回の研究結果からtDCSが統合失調症の日常生活技能を改善し、
社会復帰に役立つ可能性が示唆されました。

この臨床試験はtDCSが統合失調症の日常生活技能を
改善することを示した初めての研究です。
研究の結果は、tDCSなどのニューロモデュレーションが、
患者の社会復帰を促進する可能性を示します。

同時に、tDCSが統合失調症におけるうつ症状を改善することも、
初めて示されました(これまで、うつ病におけるうつ症状への
tDCSの効果は報告されています)。

今回の結果は、統合失調症治療におけるtDCSの有用性が多岐わたる可能性を示唆します。

※ 経頭蓋直流電気刺激(tDCS)
頭皮上に設置した電極を通して微弱な電流を流し、
脳神経細胞の活動を修飾する方式のニューロモデュレーションです。
1回あたりの刺激時間は30分以内と比較的短く、麻酔の必要がなく、
副作用のリスクが低いという利点があります。
電極の設置部位、施行回数および日数については様々な試みがあります。
これまで主にうつ病に対する効果が示されており、
抗うつ薬と遜色ない効果を見出した無作為化比較試験もあります。

参考文献:Possible Facilitative Effects of Repeated Anodal Transcranial Direct Current Stimulation on Functional Outcome 1 Month Later in Schizophrenia: An Open Trial.

 


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