メンタルヘルス対策・EAPのカウンセリングストリート 企業・組織とメンタルヘルスの両面に精通した視点でEAPコンサルティングを推進します |
||
2018年1月
山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学講座の
松尾幸治准教授、原田健一郎助教、山形弘隆講師、
渡邉義文特命教授らの共同研究グループ*は、
日常診療で使用するMRI(エムアールアイ)を用いて脳の画像を撮り、
多数の双極性障害(躁うつ病)とうつ病患者の脳の体積を計測したところ、
双極性障害の患者はうつ病の患者と比べて、
前頭葉の一部である背外側前頭前皮質と前帯状皮質という2つの部位の体積が
小さいことが明らかになりました。
双極性障害(躁うつ病)とうつ病の患者はうつ状態になることがあります。
この2つの疾患は治療法が異なるにもかかわらず、
うつ状態は非常に似ているため、診断を正しく判別することは診療上大変重要です。
そのため、客観的にこの2つの疾患を判別できる指標を探す研究が進められています。
その一つとして、脳のMRI研究がありますが、
2つの疾患について直接比較した研究はわずかで、
その違いは明らかになっていませんでした。
この研究では、
うつ状態の双極性障害患者とうつ病患者と健常者(合計1531人)の
脳のMRI画像を集めて脳のさまざまな部位の体積を測定しました。
その結果、うつ病患者群と比べて双極性障害患者群は、
前頭葉の一部である左右の背外側前頭前皮質と
前帯状皮質という部位の体積が小さいことが示されました。
また、患者群全体では、健常群と比べて右の前帯状皮質と
左下前頭皮質という部位が小さいことが示されました。
さらに、米国の参加者で再検討したところ、同様の結果となり、
広く一般的に言えそうだということもわかりました。
今回の結果は、
双極性障害とうつ病の脳の仕組みの違いを明らかにする助けとなり、
将来的にMRI検査により客観的は判別と診断が可能となり、
さらにこれらの部位を回復させる新たな治療法の開発の
ヒントになることも期待されます。
こういった研究がさらに進めば、同じうつ状態を示す双極性障害と
うつ病が脳のMRI検査により判別できるようになり、
より適切な治療を行えるようになるばかりでなく、
これらの部位をターゲットにした新たな治療法の開発のヒントになることも期待されます。
参考文献:Distinctive neuroanatomical substrates for depression in bipolar disorder versus major depressive disorder