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皮膚細胞を用いて『概日リズム睡眠-覚醒障害患者』の体内時計周期の異常を同定

2017年6月

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター、精神保健研究所、
精神生理研究部の肥田昌子室長、三島和夫部長らのグループは、
これまでに皮膚の線維芽細胞内における時計遺伝子の末梢時計周期を測定することで
個人の体内時計の周期を簡便に推定する手法を開発した。

睡眠覚醒リズムの異常は、概日リズム睡眠-覚醒障害のみならず、
気分障害や認知症などさまざまな精神・神経疾患において高い頻度で認められる。
昼夜逆転など生活リズムの乱れは患者の生活の質を低下させるのみならず、
精神疾患の再発のリスクを高め、社会復帰をさまたげる主要な原因の一つとなっている。
睡眠や体温、ホルモン分泌など多くの生体機能は
体内時計システムによって約 24 時間周期のリズムを刻んでいる。
ただし体内時計周期の長さには大きな個人差があるため、
周期の長さが極端に短縮したり延長している人では
24 時間の昼夜サイクルに時刻合わせができなくなり、
概日リズム睡眠-覚醒障害を発症すると考えられている。

しかし、体内時計周期を正確に測定するには
特殊な施設、数週間におよぶ検査期間、負担の大きい連続採血などが必要であり、
臨床での実用化には至らなかった。
そこで、ヒトから採取した少量の皮膚細胞を用いて
体内時計周期を測定する手法の開発に取り組んだ。

本研究では、
概日リズム睡眠-覚醒障害患者 67 名
(睡眠-覚醒相後退障害(※1) 41 名、非 24 時間睡眠-覚醒リズム障害 26 名)、
標準的な睡眠パターンの 健常者 50 名から採取した皮膚細胞を培養し、
末梢時計周期を測定した。
その結果、非 24 時間睡眠 -覚醒リズム障害群の末梢時計周期は
健常者群に比較して有意に延長していることが確認できた。
これは、皮膚細胞を用いて簡便に患者の周期異常を同定できることを意味している。
また非 24 時間睡眠-覚醒リズム障害患者の中でも、
周期が短い患者では時間療法(※2)の成績が良好であることを見いだし、
末梢時計周期によって時間療法の効果を予測できる可能性が示唆された。

一方、睡眠-覚醒相後退障害の患者では末梢時計周期の異常は認められず、
時間療法の効果判定にも有用ではなかった。
遺伝型の睡眠-覚醒相後退障害患者では体内時計周期が延長していることが報告されたが、
孤発型の睡眠-覚醒相後退障害は
体内時計周期の異常以外の原因で発症している可能性が示唆された。

今後は、末梢時計周期の測定法を活用して
難治例の病因研究、治療研究を進める予定としている。
概日リズム障害に関連する様々な精神・神経疾患の発症メカニズムの解明や
診断ツールの開発にも取り組み、
治療候補物質のスクリーニングシステムの構築を目指している。
これらの技法が実用化されれば、患者個人に合った医療の提供に資することが期待される。

交代勤務や夜勤従事者など不規則な睡眠リズムに陥っている人々は年々増加しており、
睡眠覚醒リズムの障害は多くの人が悩まされる
臨床上および公衆衛生学上の重要な課題となっている。
そのため概日リズム障害の診断ツールは
患者のみならず一般生活者の QOL 向上にも貢献できることが期待される。

 

※1 睡眠時間帯が 24 時間周期の昼夜サイクルに同調できず日々後ろにずれていくタイプ。
※2 高照度光療法やメラトニン/メラトニン受容体作動薬などを用いて睡眠時間帯を正常化させる治療法。

 

皮膚細胞を用いて『概日リズム睡眠-覚醒障害患者』の体内時計周期の異常を同定

 


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