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メンタルヘルス最新ニュース

世界の職場メンタルヘルス最新事情

2006年2月

アメリカ

労働安全衛生に関する政府の研究機関である国立労働安全衛生研究所(The National Institute for Occupational Safety and Health、NIOSH)のまとめによると、仕事上のストレスに起因する職務遂行上の弊害について、(1)職場の暴力の顕在化、(2)欠勤の急増、(3)雇用不安の急増――の傾向を挙げることが出来る。

同レポートによると、(1)の職場暴力の問題については、アメリカは先進国の中でも職場内の凶悪犯罪発生率が最も高く、平均で毎週20件の殺人事件が起き、また性的暴力等の凶悪犯罪も平均して1週間に100万件起きるなど、年々職場暴力が凶悪化する傾向が強まっているとされる。(2)の仕事上のストレスと欠勤については、300社以上、80万人を対象に行った調査によると、体調不良を理由に欠勤した従業員の数は1996年から2000年の間に3倍も増えている。またストレスにより欠勤する労働者は毎日100万人に上るとされる。また、(3)の雇用不安に起因するストレスも増加傾向にあり、2000年2月の調査では、約50%の従業員が雇用に関して不安を覚えていることが明らかになった。2001年9月に発表された調査結果では、2001年に100万人以上の労働者が職を失い、その数は前年合計より83%高くなっている。

ストレスが増大する背景の一つとして、同レポートでは、労働時間の長期化・労働の強化を挙げている。1999年の政府報告によると、過去10年間で労働時間が8%増え、週47時間から49時間になった。ILOが2000年に行った調査では、10年前に比べアメリカの労働者の労働時間は40時間も増えているとされる。

 

EU

欧州連合(EU)は、労働者の安全衛生を確保するための各種措置を導入し、職業性ストレス(work-related stress)の問題にも取り組んできた。欧州生活労働条件改善財団の2000年の調査によると、欧州就業者の28%が職業性ストレスの影響を受けている。また、欧州安全衛生機構の調査では、欠勤の50〜60%が職業性ストレスに関係し、心疾患のうち、男性16%、女性22%の原因がストレスであるという。

EUは1989年、「労働安全衛生の改善を促進するための施策の導入に関する理事会指令」を採択した(これは枠組み指令と呼ばれ、その後各分野の個別指令を採択)。枠組み指令は、事業者は「就業上のあらゆる局面で労働者の安全衛生を確保する義務を有する」と規定する。この一般原則に基づいて、事業者は、リスクの回避、リスク発生原因の除去、仕事の労働者への適合化等に関する措置を講じなければならない。職業性ストレスに関しても、それを除去または削減する義務を有する。EU加盟国は、指令の内容を自国の法令に取り入れている。

欧州委員会は、職業性ストレスを包括的に分析した「職業性ストレスに関する手引き」を1999年に発表した。手引きは、職業性ストレスの原因、症状、影響などに関する全般的な情報を盛り込み、職業性ストレスの特定に関する一般的なアドバイスを掲載している。国あるいは企業レベルのソーシャルパートナーの実際的な行動枠組みを提案し、治療よりも予防に重点を置いている。

 

イギリス

英国安全衛生庁(HSE)は職業性ストレスを「過度のプレッシャーあるいは本人の能力を超えた要求に対する有害反応」と定義し、企業は適切なストレス・リスク管理策を取るべきだとしている。しかし2004年11月に導入された「職業性ストレスのレベルを測定するための管理標準」には法的拘束力がなく、産業医の設置も任意であるなど、労働者の職業性ストレス管理は個々の使用者に委ねられているのが現状だ。(日本では、50人以上の企業は非常勤の産業医を選任することが労働安全衛生法で義務付けられている)

HSEの統計によれば、職業性ストレス等の精神疾病による1年当たりの損失日数は約1300万日、社会的コストは37億ポンドにものぼると見られている。また精神疾病の悪化は失業につながりやすく、働いていた人が疾病・障害のために働けなくなった際に給付される就労不能給付の受給者数が増加している原因のひとつと考えられている。現在、同給付の受給者総数は270万人。年間費用は77億ポンドに達している。低失業率下にもかかわらず、増加している同給付を財政当局は問題視しており、改正方向で準備がすすめられている。こうした状況は、使用者が労働者のストレスと心の病の原因に取り組む措置を十分に講じてこなかったことが原因と考えられている。

 

ドイツ

労働時間が世界的に短いとされるドイツでは、労働とストレスを論じる際にも、労働時間との関連が注目されている。労働組合に近いハンス・ベックラー財団が専門家に委託した「労働時間の増加と健康を損なうことの関連性に関する調査」では、長時間労働がとくに心理・神経系の障害の原因の一つになっているとし、週39〜40時間の水準を境に「被害リスク」が増加すると警告する。一方、経営側に近いIW(ケルン経済研究所)は、2004年の病気欠勤日数が過去最低水準だったことを報告し、疾病率の低下をポジティブに評価している。

このように、長時間労働の必要性が論議されているドイツでは、労働側陣営から長時間労働のリスクが指摘される一方、経営側陣営からは、就業者の健康をアピールする見解が出ている。欧州生活労働条件改善財団の次の調査結果(2005年)の公表などで、さらに実態の解明が進むと思われる。

 

フランス

夏のヴァカンスや「週35時間労働制」(注)など、「ゆとりのある働き方」を実践しているイメージが強いフランスだが、最近、労働におけるストレスへの関心が高まりをみせている。最近注目されているのが、「モラル・ハラスメント」である。この言葉は、フランスの精神科医マリー=フランス・イルゴイエンヌ氏の研究により、広く人々に知られるようになった。同氏によれば、「モラル・ハラスメント」は、「言葉や態度によって、巧妙に人の心を傷つける精神的な暴力」であり、家庭や職場で日常的に行われる「見えない暴力」でもある(日本の「いじめ」に近い概念として、しばしば「精神的嫌がらせ」と訳される)。

こうしたなか、フランスでは、ストレス等の労働者のメンタルヘルスに対するダメージを「職業上の第一のリスク」として認識し、その予防の重要性を論議する動きが出るとともに、その要因となる「モラル・ハラスメント」への関心も、さらに高まりをみせた。そして、2002年1月に公布施行された「労使関係近代化法」により、(1)企業内における「モラル・ハラスメント」を規制する条文を導入(労働法L122-49条〜54条)(注6)、(2)被用者の身体的健康だけにとどまらず精神的健康含めて健康予防における使用者の責任を拡大する(労働法L230-2-1条)――という労働法の改正が行われた。同時に、刑法にも罰則規定が設けられた(刑法222-33-2条)。

注:失業率や経済状況の悪化を背景に、「週35時間労働法」は見直しがすすめられ、2005年3月22日に「時短緩和法」が成立、時間外労働の上限が年間180時間から220時間にひきあげられた

 

労働政策研究・研修機構
「テーマ別国際比較」より

 

(一言コメント)

今回の内容は、各国に拠点を展開されている企業にとっては、注目すべき内容となります。当然ではありますが、メンタルヘルスケアについての各国の捉え方、対策の講じ方は異なりますが、その中でも、義務化されている国、義務化されている内容に関しては、注意すべきところとなります。これを機会に、国内のみならず、海外拠点におけるメンタルヘルスケア対策の状況について把握されることをお勧め致します。

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